ストレスのワクワク化

大仕事をなし遂げた。しかしいざ実現してみると、やり遂げた実感が湧いてこないことがある。未来に起きるであろう結果についての自分の予測と、結果が出た後に抱く感覚のズレを「インパクトバイアス」と言う。こんなことのために、なぜ自分は必死になっていたのか。そう感じて自尊心が傷つき、落ち込んでしまう。達成したのに不幸を感じてしまうという矛盾。

その落ち込みから立ち直るために、人はさらに高い目標を目指すこともある。その目標がモノやカネであれば、もっともっとという循環に陥り、満足できるゴールは逆に遠のく。経済的な満足を求めたあげく、健康や人間関係の悩みに直面すれば、今度は経済的な成功に幸福を感じられなくなってしまう。

このようなインパクトバイアスに陥らない満足感はあるのだろうか。それは、生きていること自体が幸せと感じる境涯であろう。悩みが無くなるわけではない。不幸やストレスを直視し、そこから立ち上がる力。悩みを乗り越えた経験が宝であると思える生き方だ。

目標に向かう時、人の傾向性としては「戦略的楽観主義」と「防衛的悲観主義」があると心理学では説く。前者は成功した場合を思い描いて努力する。ただし戦略的とつくように、何とかなるだろうという気楽な楽観主義とは異なり、何とかしていこうとする力強い楽観主義だ。後者は失敗した場合を思い描き、そうならないように努力する。結果が同じだったとしても、達成によって得られる幸福感は違うだろう。

性格的に悲観主義的な人にも改善するコツがある。人はストレスや不安を感じると心拍数が増える。そこで、不安でドキドキしている自分を、あえてワクワクしていると自分に錯覚させることで、ストレスを乗り越えることができる。これを「再評価」と呼ぶ。不安な時に、例えば「ワクワクしてるー!」と声に出してみるとよい。困難を挑戦のワクワク感に置き換えていく。その繰り返しが、いつしかストレスを挑戦のエネルギーに変える自分へと成長させる。