短いフレーズにご用心

俳句はわずか17文字の中に、詠む人の世界が表現される。その短さゆえに、どこがどうおかしいなどと揚げ足を取りにくい。17行のボディコピーであれば、論理的につながっていないなどと揚げ足をとることもできる。広告のキャッチフレーズが短いのも、このことと無関係ではない。長いキャッチコピーの名作もあるが、ここでは例外とする。

出会い頭の勝負と言われるように、広告では関心をキャッチする力が求められることが多い。キャッチしなければスルーされてしまう。文字通りキャッチフレーズだ。広告は、そもそも見たい・読みたいとは思われていないからだ。キャッチするための様々な手法がある。驚かせる、ささやく、問題提起する、疑問を抱かせる、などなど。テレビはタイムシフトで視聴されることが多くなっているが、リアルタイムの視聴ではCMはやはり出会い頭が勝負だ。WEB-CMも冒頭数秒で決まる。YouTubeのバンパー広告はわずか6秒間だ。バンパーは動画広告の俳句である。

俳句は全てを説明しないゆえに想像力を喚起する力がある。蛙が飛び込んだ古池の様子、蛙の仕草、飛び込んだ音、その時何を考えたのかなどが、それぞれの頭の中に出現する。短いフレーズだからできることだ。

短いフレーズで伝える技術を持っている人は、店員であれ、経営者であれ、政治家であれ、コミュニケーションの達人と言える。いくら役立つ話でもクドいと共感は生まれない。逆に正しくなくとも短くズバッと言い切る人には共感しやすい。難しい内容の話ほど、正しいかどうかはさて置き、ズバッと言い切る人に人はついて行ってしまいがちだ。短いフレーズには、考えさる隙を与えず人の心を動かす力もある。そのメリットとリスクを忘れてはならない。