プレゼンテーションの行方

プレゼンは、パフォーマンスからリモート時代のプレゼン映えへ。(前回の続き)

プレゼンのパフォーマンスも、ほどほどに。

さて、オリエン、社内協議、内外のスタッフへのブリーフィングとディレクション、企画の社内調整、タレント事務所への説明などを滞りなく経て、いよいよプレゼンとなるわけです。プレゼンの作法は、それこそ千差万別、プレゼンテーターによって個性的な技が繰り出されます。プレゼンで盛り上げすぎて、結果で評価されないことも起きます。大変な期待を受けて採用されたけれど、作品として完成したら「なんだか冴えないね」という、プレゼン倒れというやつです。クライアントにしてみれば、プレゼンにだまされたということです。それを避けるために、外資系のクライアントには多いのですが、たとえばCMの場合では、全てのカットについて、演出レベルまで詳細に描き込んだストーリーボードや、場合によっては実際の尺のビデオコンテの提出が求められることもあります。ストーリーボードが契約書になるという発想でもあるからです。私の経験では、タレントの代役のスタンドインで実際に撮影して編集・MAした映像で検討し、決定したら本物のタレントを入れて本番を制作するということもありました。さらに表現だけではなく、結果に対してコミットを求められることもあります。そうなると、もうプレゼンテーターのパフォーマンスで何とかなるというような甘いプレゼンはできなくなります。

オリエン返しが、最良の答えとはかぎらない

また、オリエンではCMの企画を求められたのに、他のアイデアで返すこともあります。たとえばイベントを提案し、この課題を解決するにはCMより優れたソリューションがあります、と返すわけです。クライアントのオリエンに逆らうわけですので、クライアントの心を動かすコミュニケーションの力が必要です。企画書自体がすでに企画になっているというか。しかし、そういう提案はいわば本命に対する穴馬になるので、それ一本で勝負するのは難しい場合があります。やはり第一印象としてはクライアント逆らってしまうからです。指定プレの場合は、CMの案も提案して、さらにそれを超えるソリューションとして他のアイデアを提案できます。一方、競合プレの場合、オリエンでは求められていない企画と心中するのも潔いですが、全滅するリスクを分散して、CMを提案するチームとイベントを提案するチームとで分担することもあります。最終判断をするのはクライアントですが、クライアントの宣伝セクションとしても、CMのオリエンを社内にオーソライズしておいて、結果的にCMを作らくなったと判断することは、オリエンを自ら否定することになるので勇気がいります。私もあるクライアントの会長プレでそれをやり、その場で採用していただきましたが、後で宣伝部長に怒られました。

クライアントにも待ち受ける、社内へのプレゼン。

企画の決定過程もまた、クライアント内のコミュニケーションの場です。経営や広報宣伝のトップが即断してくれるケースもあれば、プレゼンの場には参加していなかった社員も入れて投票で決める、といったケースもあります。役職者にウケた企画が若手社員にはぜんぜんウケなかったという場合がありますし、なんといっても社員の共感が得られないものは作りにくいからです。広告は社員のモチベーションにも大きく影響します。さらに、ターゲットに近い、たとえば女性や若手社員の票が多く集まった事実が、その企画を上層部に上げる際のエビデンスになるということもあるでしょう。この場合は、プレゼンの場がいくら盛り上がろうがあまり関係なく、コンテが独り歩きしてしまうことを前提に企画を作る必要があります。また官庁の場合は、企画書一式を先に提出して、担当者によって検討された上でプレゼンを迎える場合が多く、提出時の企画書の出来そのものが成否を決することになります。そして、いよいよオンエアや掲載。これも消費者や全てのステークスホルダーに対してのプレゼンです。それまでのプロセスではいくら見事なプレゼンだったとしても、どんな決定プロセスだったとしても、視聴者は完成作品しか見ません。企画の前提となる分析や戦略はとても重要ですが、結局、世の中に対してのプレゼンが成功しないと意味がありません。したがって、クライアントへのプレゼンで勝つことが全てと勘違いすることはとても危険です。そこを勘違いすると、たとえば弦楽四重奏の生演奏をバックにプレゼンしたとか、タレント本人をプレゼンの場で挨拶させたなどのプレゼンパフォーマンスが実在したわけです。どちらも、企画の本質とは関係ないとお叱りを受けたようですが。

オンライン時代の、新しいプレゼン映えを。

プレゼンのパフォーマンスという視点では、最近はオンラインのプレゼンが増えています。そしてそれは今後も加速していくでしょう。そこはプレゼンテーターのパフォーマンスなどが意味を持つコミュニケーシ空間なのでしょうか?モニター越しのプレゼンでは、クライアントとクリエイターが空気を共有するような熱いプレゼンや、場を盛り上げるための演出的なプレゼンは威力を失っていくと思われます。オンラインのプレゼン空間では、企画のソリッドな核心部分の提示や、クールな説得力がますます重要になっていくでしょう。また、プレゼン映像の記録を、より多くの担当者で共有できたり、じっくり見直して比較検討することもできるので、より客観的な検討に耐える説得力が重要になっていきます。これからのプレゼンテーターは、オンラインを前提とした新しいプレゼンスキルを磨くことが求められます。プレゼンの「新しい日常」における、オンラインならではの「プレゼン映え」を追求することが課せられるでしょう。