続きはあなたの創造力で

マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」を観た方は多いと思う。マイケル自身は、コンサートの本番を迎えることができなかったが、そのリハーサル映像などで構成されたメイキングフィルムだ。もしコンサートが実現していたとしても、この映画にはメイキングを超えた独自の価値があることは疑いない。

映画の演出は、ロンドン公演のクリエイティブ・パートナーのケニー・オルテガ。マイケルへの愛と、実現できなかったコンサートへの強い想いを全編から感じる。コンサートをめぐるマイケル・ジャクソンの「人」を描く中で、「マイケル・ジャクソンとは何者かに迫る」ことがコンセプトだろう。

一方、ファンの想像力で創る「コンサートの素材集」というコンセプトも成立するのではないか。素材はここに揃っている。どんなコンサートになるかはあなたの想像力次第だ、と投げかけているわけである。マイケルから託されたように、それぞれのファンの脳内に、無数のステージが出現する。

タイトルの「THIS IS IT」には、さあいよいよだという意味と、もうこれで終わりだという意味があるらしい。それさえも観る側に託したと考えることもできよう。広告もかつては、答えはあなたの想像力で、と受け手に答えを託す表現があった。今は、答えはこれですという直球表現ばかりである。