新おひとりさま

「おひとりさま」とは元来は生涯を独身で通す人、それを楽しむポジティブな生き方のことである。しかし、今は独身かどうかはともかく、一人でいることを楽しむ生き方として使われることが多い。そのような人は昔からいた。一人旅や一人メシを楽しむ人たち。しかし、それを括るジャンルはなかった。それを「おひとりさま」と命名したことで、積極的に一人を楽しむ人たちの価値観が顕在化し、マーケットが生まれた。

「おひとりさま」というと女性を想起しがちだが、「孤独のグルメ」の主人公も「おひとりさま」だ。主人公は個人経営者という設定。独身だが孤独な生活を送っているわけではなく(大勢で騒ぐのは苦手なようだが)、営業という人と会う仕事である。ただし食事時は孤独を愛する人となる。一人メシという外面とは裏腹に、食と向き合い自己と対話する内面の豊かさのギャップが、ドラマの世界観を形作っている。

孤独のグルメから「おひとりさま」を紐解くと、「おひとりさま」とは、見た目は一人だが内面には豊かな世界が広がっている状態のことだろう。孤独ゆえに内面の豊かさを持った人が「おひとりさま」と言えよう。

一方で、一人でいることのネガティブな面をコロナ禍は顕在化させた。今までは皆で行動していたから気づかなかった孤独によるストレスに耐えられない人もいる。一人で行動することをポジティブに楽しめる「おひとりさま」が増える反面、一人でいることにストレスを抱える人たちも増えていく。